信長燃ゆ〈上〉 (新潮文庫)



信長燃ゆ〈上〉 (新潮文庫)
信長燃ゆ〈上〉 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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否定論が有力な朝廷・公家黒幕説を採る本だが、信長挽歌として捨て難い。

本書はたしか2000年頃に日経新聞夕刊に連載された小説。公武の確執という観点から本能寺の変での死までの信長最晩年を描く。本能寺の変の真因に関するいわゆる朝廷・公家黒幕説に依拠する本で、当時はその説が流行しており、私もワクワクして日経新聞夕刊が届くのを待っていたものだ。しかしながら、この説は信長は謀略で殺されたのか―本能寺の変・謀略説を嗤うによって論理的に否定されており、今では光秀単独犯説が確立したといってよいだろう。故に、本書で歴史の真相を知ったとは考えないでほしい。いくら文武両道に秀でた近衛前久とはいえ変に備えて戦支度をするなど公家がそこまでするはずがないではないか。その他、冷静に考えるとあり得ないことは多く、本書は「本能寺の変」はなぜ起こったか―信長暗殺の真実で指弾されている「荒唐無稽」な本の1つかもしれないが、だからといって無視できない魅力がある。左義長の描写から惹きつけられるし、荒唐無稽ついでにフィクションとして公武の垣根を越えた信長と勧修寺晴子の恋愛や信長に恨みを持つ伊賀の忍者を登場させる。恋する信長を描いた小説は寡聞にして他には知らない。前久や晴子の心を掴む一方、前久が信長を打倒せねばならぬと考えるに至る信長の冷酷な行動、特に甲州攻めと武田勝頼の悲劇、そして朝廷・公家を信長打倒の黒幕にするのは論外としても、公武の微妙な関係はよく描かれている。ただ、信長晩年の底知れぬ孤独までは感じられず、その点では安土往還記 に及ばない。しかし、陰謀を悟った晴子が必死で本能寺に駆けつけようとする姿は哀れではないか。歴史的事実とは離れた壮大な娯楽フィクションとして充分楽しめる本と私は思う。
巨星をなぜ墜ちたか

宗教に代表される中世的権威をとことん破壊し、近代日本社会の基盤をつくったのは織田信長である。
信長なかりせば、近代日本の歴史はよほど違っていたものになっていたことは間違いない。

作家の塩野七生氏も「信長が日本に政教分離を確立した」と高く評価しておられるが、
信長が「第六天魔王」と罵詈讒謗を受けながら強行した一連の「対宗教戦争」によって、
日本では政治権力が宗教に優越することが確定した。
実に西欧における政教分離原則の確立に先立つこと200年である。

その日本史上に輝く巨星が、権勢の絶頂において、部下の頭を張り倒したことくらいで殺されるものだろうか? 
本能寺の変の「光秀怨恨説」には、昔から胡散臭いものがあった。

本書は、信長がなぜ失墜しなければならなかったかを、最新の歴史研究の成果も踏まえ、あますところなく描いている。
本書の説が歴史の真実であるかどうかは、わからない。
だが、十二分に説得的であり、何より小説として抜群に面白いのだ!!
公武相反する妙味。

稚拙な信長モノ書って、光秀のうらみつらみ説が主流であんまり面白くはないですが、本書は公家VS信長って感じであるいみ新鮮味があります。
歴史的になにが本当なのかというと、実際のところよくわかっていないわけで、少なくとも広く言われている「光秀がいじめられて〜」なんていうのは「物語」なわけです。
諸説あり増すが、想像の範疇を脱しないわけで、そういう中では本書は旧来の光秀怨念説一辺倒ではない分楽しめます。
前久におんぶしすぎ

 公家と武家との対立で信長は滅んだ、という印象を受けるが、公家一人にこれだけの実力があれば天皇家は武家に力押しされなかったのではないだろうか。
 誰もが本能寺の小説を書いているが、ひとつとして納得のいく書物はない。なにかと理由付けしようとするからだろう。
 そもそも光秀が信長を討ったということは光秀がどういう人物か、というものが分かっていなければ書くのは難解である。
 例えていうなら現在の警察とすると、被害者である信長を容疑者である光秀が殺した、ということならば被害者の詳細は把握してるが、捕まえた光秀の性格は何一つ分からない、ということはありえないだろう。
 その論点から講じない限り、本能寺の変は納得のいくような結論は出ないかと思われる。
新しい切り口で始まります

数年前に新刊本が出たときからこの本を注目していましたが、この度、文庫本が出版されたことで迷わず購入しました。
あとがきにも著者がかかれていますが、この本は、洋書に見られるような工法を取り入れられています。普通、起承転結で始まりますが、この本は、冒頭が「結」です。いきなり「本能寺の変」の事件模様をドラマチックに物語っています。最初の部分に動乱があり、小説の目玉となる見どころのひとつになっています。
戦国時代の武勇伝をお気に入りの方はお奨めできませんが、大河ドラマ的な小説がお好みの方にはこういう切り口の小説に新鮮味が感じられることかと思います。



新潮社
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